昔から「建築家の設計した自由な家に住みたい」という夢を抱いていたので、実際に家を建てることが決まった時は、知識をつけようと住宅雑誌や本を買いあさりました。偶然、アーキッシュギャラリーのホームページを見つけ、斬新な家の施工例を見て「ここしかない!」と強く思い、さっそくオープンハウスに出かけました。熱意のある説明の中、最後に「お施主様にも家づくりをする上でエネルギーをかけてもらいます」と頼もしい言葉を頂き、「受けて立ちます!」との気持ちからアーキッシュギャラリーで建てようと決めました。
その日から私たちのかけがえのない家づくりの時間が始まりました。建設予定の土地が都心で44坪と小さく、眺望は望めない、駐車場に囲まれ将来どう変化するか分からない環境という事から、自分たちなりに考えたテーマが、「外に閉じて、中に開く」「光や風を取り込む開放的な中庭のある家」「真っ白な箱の様な外観」そして、大事なことが「遊び心を忘れない」。
良い意味での「遊び心がある家」はゲストも思わず楽しく過ごせる家という気持ちからです。次々と膨らんでくる想いを胸に、40個近く箇条書きにした希望条件と雑誌から切り抜いたイメージ写真を手にし、建築家の新美先生、担当コンダクターの織田さんにぶつけさせて頂きました。そして、見事に形となった模型と図面を見た時は、本当に感動したことを今でも覚えています。ただ、白い外観を伝えていたのに、提案されたのが珍しい赤茶色のガルバリウム鋼板を使用した≪一文字張り≫という手法でした。イメージが湧かない私はなぜ、提案されたのか分からず、一度は白い外観に変更したのですが、打合せを重ねていく内に私達の「遊び心を大切にしたい」。そんな言葉からこの外観を提案してくれたのだと感じ、挑戦してみようと思いました。
2階に設けたテラスへどうしても直接、中庭から上がれるようにしたいと伝えたら、「予算」という壁にぶつかった時であったにも関わらず、木製のはしごを低予算で提案して頂き、自分達に合ったコストダウンでの可能性を広げてくれるのも信頼関係の中から生まれるものなんだと感じました。他にも本当に、家の細部に至るまで、自分達の意見をうまく取り込んでくれ、注文住宅での家づくりの醍醐味を味わいながら、数十回に及ぶ打合せを行い、完成した家を見た時は、苦労した甲斐があったなぁと本当に嬉しくて、早く家族で暮らしたい、たくさんの友人達を招きたい!と心から思いました。
ゼロから作り上げる「家」なので、時間やエネルギーはいりますが、「世界中で一邸」が手に入ることは確実です!
設計者コメント
明るくほがらかなオーナーご夫妻の要望は、敷地の周囲からプライバシーを確保し、家族をいつも感じることができる中庭のある家でした。太陽の光と空気の流れを感じる中庭、内部空間との一体感、間仕切を最小限にしたプランニング、開放的でシンプルな螺旋階段、材料の素材感を生かした自然な内装。閉鎖的になりがちな中庭を明るく心地よい家づくりの中心的な存在となるよう気を配りました。赤煉瓦色の一文字鋼板とアルミ窓のバランスによる正面外壁はこの家と街とをやさしくつなげるとともにオーナーご夫妻の個性を生かしたデザインをすることができたと思います。
- 設計事務所
- グラスアーキテクツ 新美勝弘
- 得意分野
- 個人住宅、商業施設など
住まいという建築にとって美しいデザインは大切だと思っています。その美しさにも様々な定義がありますが、プランの美しさ、外観の美しさ、構造の美しさ、材料の美しさ、それらをわかりやすく表現すること、そして環境や自然との関わり、街との関係などその家の社会性を考え、デザインしていきたいと思っています。